
本当は危険な【現状の内側】
「諸行無常(しょぎょうむじょう)」
”この世は常に変化していて、不変なものは何もない”という意味。
仏教って堅苦しい言葉が多いですよね。
別に仏教の話をするわけではないので、安心してください。
とりあえず”この世は変化している”ってことです。
ま、そんなこと言われなくても”常に変化している”という事実は皆さんご存じですよね。生まれたばかりの赤ちゃんが年老いて寿命が尽きるまで、ずっと変化し続けるし、細胞は1秒たりとも停滞することなく分裂とアポトーシス(死亡)を繰り返し、毎日200グラムの細胞が死んでいるという事実。5日で1キロは結構な量ですよね。
では、変化しているのは私たち人間だけでしょうか?そんなことはないですよね。
動物、植物、自然、鉱物、車、ビル、机、椅子、全てが変化し続けます。もちろん、世の中の情報と歴史も変化、いや激変しています。
まさに「諸行無常」。
でも不思議ですよね。日常でそれらの変化になかなか気がつかない。なぜでしょうか?
理由は2つあると思います。
理由1:自分にとって重要なものしか認識しないから。
脳は、自分にとって重要じゃないものは認識しません。世の中の全てを認識していたら脳はパンクしてしまいます。苫米地博士の言葉を借りるなら「脳の機能を全部使うと数秒で餓死する」ということ。
理由2:すべてが一斉に変化しているから。
あなただけ毎年10歳のスピードで成長しているなら、相対的な変化のスピードが違うので変化に気付けます。でも、全ては一定のスピードで変化するため、あたかも変化していないように錯覚してしまうのではないでしょうか。
例えば、地球が自転と公転を繰り返し、1秒たりとも宇宙の一点にとどまることがないのに、自分の立っている足元だけは安定して永遠に同じところに止まっていると感じてる。
「え、365日後に同じところに戻るんじゃない?」
いえ、宇宙自体が膨張し続けているし、銀河自体が移動しているため、同じ場所に戻ることはないのです。戻る確率は、年末ジャンボ宝くじを毎年1枚だけ買って8500億年間、毎回1等を当て続けるぐらいの確率だと思います、たぶん。
事実は、あなたが住んでいる家は宇宙規模で考えると、同じ場所に戻ることは永遠にないのです。しかも時速10万キロで宇宙を移動している。
要は、「変化していない」は錯覚で、本当は思い切り変化している。でも私たちの脳はそれを重要視していない。
ここで伝えておきます。
コーチングで現状の外側にゴールを設定して達成に向かうということは、あなただけ世間の変化の流れからはみ出すことになります。
つまり、現状の内側から外側に飛び出すということ。これまでの変化の塊(地球)の外に飛び出すので、不安定になるということ。それこそ恐怖ですよね。
普通、脳は変化の内側は安全で、外は危険と感じます。昨日と同じように今日を過ごし、今週と同じように来週を過ごし、今月と同じような来月を過ごし、そして一年が終わる。一見つまらない人生に思えますが、脳にとっては安心で平和な一年です。これが現状維持の唯一のメリット。同じ日常を繰り返したい人にとっては現状維持はベストチョイスです。
でも、現状から抜け出して、現状の外側のぶっ飛んだゴールを達成する人にとっては現状維持は最悪の状態。今までにないスピードで進化するためには現状維持から抜け出す必要があります。
『現状維持=安全』ではなく『現状維持=危険』。コーチのマインドは世間の常識とは逆です。
おそらく、この記事に辿り着いているあなたは、コーチと同じマインドをすでに理解されていると思います。
現状維持の外側に出るにはどうしたらいいの?
「コンフォートゾーンを現状の外側に移行させる」が一つの方法。
コンフォートゾーンとは居心地がいい環境。簡単に言うと「これが私らしい」と思える思考と判断、それに伴った行動のこと。
通常は、現状の内側にコンフォートゾーンがあり、「現状維持が私らしい」にセットされています。
変わりたい!と思っても変われないのは、コンフォートゾーンが現状維持にあるため、変わりたいあなたを必死に現状に縛り付けるように働くから。この縛り付ける働きがホメオスタシス(恒常性維持機能)。
ということは、ゴールを達成するには、現状維持のコンフォートゾーンをゴール側に移行する必要があります。
安全な現状から飛び出して、新しいコンフォートゾーンを創るということです。
ここでよくある誤ったコンフォートゾーンを一つ解説します。それは、今の環境をコンフォートゾーンにしてしまうということです。
現状の居心地のよさではなく、あくあでも未来のゴール達成した自分にコンフォートを感じることが重要なんです。現状を居心地良くするということは無意識に「自分の理想は現状にかかっている」と無意識に伝えているのと同じ。現状に心地よさを感じるとますます現状に縛られてしまう。
順番が逆。常にゴール側の自分にコンフォートを感じることで、現状が変わる。
無意識の”当たり前”を変える必要があります。
ゴール側がコンフォートになれば、現状は逆に居心地が悪くなるものです。現状に不満がある状態が正解です。
危険な内側と安全な外側のどちらをコンフォートゾーンにするかは、どちらをよりリアルにするかに懸かっています。
危険といっても現状維持にとって危険なだけで、実際に身体的、精神的な被害を被るわけではないので安心してください。
脳はリアルな方を現実であると認識します。
実際に私たちは夢の中で体験しているはず。
夜、夢を見ている時は、脳にとっては夢がリアルになります。だから、実際に怖い夢を見ると心臓がドキドキするし、悲しい夢を見て本当に涙が出るし、楽しい夢を見てゲラゲラ笑いながら目を覚ますのです。脳の中だけのリアルが実際の体という物理現象にも影響を与えるのです。
電車の中で小説を読んで、ストーリーに感情移入して泣いたり、笑ったりするのも、電車に座っている自分よりも小説内の登場人物にリアルを感じた結果。最近は、VRでも簡単に体験できますよね。
リアルの作り方
リアルを作る簡単な公式があります。
それは、I x V = R
(I:Imagination 想像)x (V:Vividness 鮮明さ) = (R:Real 現実)
つまり、想像力と鮮明さが掛け合わさったものが現実になるということ。ポイントは掛け算になっているところです。いくら未来のゴールを想像しても、鮮明さに欠けると現実にはならない。
鮮明さは五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)を上手に使って感じましょう。
小説の中で、魔物から逃げて山の中を走り回るときの揺れる葉っぱ、小枝を踏み締める感触、小鳥の鳴き声、登場人物の息遣いなどが現実よりもリアルに感じてストーリーに没入するから、恐怖で心臓がドキドキするのです。
ところが、小説を読んでいる時に隣で赤ちゃんが泣き出したり、酔っ払いがイビキをかき始めると、一気に現実の方がリアルになり、小説に没入できなくなります。
あなたのリアルは、想像力と鮮明さが掛け合わさったときに実現します。
鮮明さを高める方法は、アファメーション、ビジュアライゼーション、セルフトークのコントロールなどたくさんあります。苫米地博士の参考書や講義で簡単に学べます。
あなたがゴールを達成した自分に居心地の良さを感じるくらいにリアルになると、コンフォートゾーンがゴール側に移行されます。移行されたらあとはホメオスタシスの出番です。ホメオスタシスの機能は、あなたをコンフォートゾーンに運ぶことなので、勝手にゴール側に運んでくれます。
ゴールの達成方法は脳がクリエイティブに生み出してくれるので、あなたはリラックスしてゴール達成を確信しましょう。
Have to(〜しなければならない)なことは不要です。脳は敏感なので、Have toをした瞬間、「あ、僕の能力を信用していないな」とエフィカシーを下げてしまいます。
日常の95%は無意識で活動している
無意識の思考と行動が現在のあなたという人間を表現しています。外見は同じでも無意識が変われば別人になるということ。
分かりやすいようにスポーツ選手の例で話しますね。
スポーツ選手がコーチングのセッションを受けると、その効果が比較的短期間で現れるのは、勝負の勝ち負けの大部分が無意識の優位性に直結しているから。
卓球や野球のバッティング、テニスやボクシングなど、対象物がものすごく速く動く競技は無意識が関与していることが分かりやすい種目です。
卓球の球は、1秒間に150回転しながら100km〜120kmのスピードで対戦相手のラケットから0.2〜0.3秒で跳ね返ってきます。凄まじいスピードです。
もし、対戦相手が打ち返した球を目視で確認し「さ、打ち返すぞ」と考えてから手足を動かしていては完全に振り遅れます。テニスやボクシングも同じことが言えます。
そんな凄まじい攻防を可能にしているのは、無意識が予測・判断しているから。
ということは、無意識が変わると全く違う動きの選手になってしまうということです。動きが変われば当然、結果も違ってきます。スポーツ選手がスランプに陥ったときに一時的な休養を取ったり、瞑想したりと無意識への働きかけに立ち返るのは、本能的にそれを知っているからだと思います。
スポーツ選手にとって精神統一、集中力、イメージトレーニングが非常に有効であるように、無意識への働きかけが専門のコーチングが選手のポテンシャルに影響を与えるのは自然なこと。
もちろん、これはスポーツ選手だけの話ではありません。私たちも日常の95%は無意識で動いてる。
朝、目が覚めたらiphoneを手に取りSNSの「いいね」を確認して、トイレに行って、歯を磨きます。「さ、歯ブラシを左手に持って、歯磨き粉を1.5cm出して、口に運ぶぞ」なんて思わなくても勝手に(無意識に)やってますよね。
ビジネススーツに着替えて玄関を出たら「よし、昨日と同じように電車に乗って渋谷で降りよう」なんていちいち考えません。全部、無意識が勝手にやります。
この無意識を180度変えるということは、思考と行動が変わり別人になるということ。
そして”どんな無意識にかえるか”を決めるのが現状の外側ゴールというわけです。
「なんで外側の外側じゃないとダメなの?」
それは、現状の内側では、今の無意識を変える必要がないから。
卓球を練習している小学生が関東大会で入賞することをゴールにするのと、オリンピック5連覇をゴールにするのでは、無意識に働きかけるインパクトが全然違います。当然、普段の練習に取り組む姿勢も違ってくるし、勝ち負けに対する捉え方も違います。
関東大会で優勝して「やった!」と喜ぶ選手と「私なら、これくらい当たり前、まだまだ強くなる」と満足しない選手とでは、その後の結果が大きく違ってきます。
世界で活躍しているスポーツ選手が小学生のころに大人が驚くようなゴールを設定し、作文や目標設定を書いていた話はよく聞きますよね。現状の自分からぶっ飛んだゴールを設定することで、無意識にまで大きな影響をあたえるんです。
「無意識にどんな影響を与えているの?」
無意識の変化に関わるのはRAS、スコトーマ。
RASとはReticular Activating Systemの略語で、日本語では網様体賦活系(もうようたいふかつけい)といいます。脳が”自分にとって重要なもの”に敏感になる脳の働きです。簡単に言うと、自分にとって重要なものにフォーカスする働きが脳にはあるということ。
そして、スコトーマ Scotoma。もともとは眼科医の医学用語で「視覚的な盲点」のこと。これを元祖コーチングのルー・タイス氏によって「心理的な盲点」として広まった言葉です。
RASとスコトーマの関係は、コインの裏表と同じ。RASによって重要なものに敏感になり、反対に鈍感になったものがスコトーマ(盲点)。そして、この両者の働きは無意識に行われているのです。
もう少し詳しく言うと、自分にとってのゴールを決めた後は、ゴール達成にとって重要なものと重要でないものを脳が勝手に判断し、重要なものに敏感に反応してくれる、ということです。
RASはとても優秀な味方なんですね。なぜなら、あなたのゴール達成に100%協力してくれるから。ゴール達成に必要なものだけ運んできてくれます。しかも無意識に。
優秀すぎるので、もしゴールがなく現状の内側(現状維持)のままだと、RASも現状維持に全力で働いてしまいます。こうなると「よし、勉強するぞ」「読書をするぞ」「ダイエットするぞ」と決意しても三日坊主(現状維持)で終わってしまいます。
この無意識の働きを上手に利用して、あなたの無意識に”現状の外側のゴールを達成できるのは当たり前である”と書き換えるのです。
未来を変えることは可能か?
未来の選択を変えることで到達できる未来世界は無限に広がります。
玄関を出て左に行く世界と右に行く世界では違う世界です。昼食の後にコーヒーを飲んだ世界と紅茶を飲んだ世界では別の世界です。A社に就職した人生とB社に就職した人生、友人と出会った人生と出会わなかった人生。人生は分岐点における選択で何度も変化してきました。
過去がそうであったように、これからの未来もあなたの選択次第で到達できる未来世界は無限に存在しています。重要なことは何を選択して何を選択しないかということ。その判断基準が未来のゴールです。
無限の未来世界の一つを選び出して”現在”を連続して生み出し続けていくのが人生。
過去の選択は変えられないが、未来の選択はあなた自身で自由に選べます。選び出す未来世界を自分の好きなようにすればいいのです。
自分の選びたい世界を脳にリアルであると認識させる。ホメオスタシスの”リアルな世界を選択する働き”とRASの”重要なものが見える働き”があなたをゴールに近づけます。
行きたい未来のあなたの姿をリアルに思い描く。現実よりもリアルに。
「未来を変えることは可能か?」
もちろん可能です。なぜなら、あなたはこれまでもずっと自分の選択で未来を変え続けてきたのだから、これからの未来も当然、変えることができます。
ただ、どうせ変わるなら現状維持ではなく、現状の外側にワクワクするようなぶっ飛んだゴールを設定してはいかがでしょうか?
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